NO MORE TRAGEDY

小山田亮はNYで語学留学中にニューヨーク市警のパトカーに撥ねられて、24歳の若さで命を落としました。遺族は亮の死に関する真実を明らかにするために、ニューヨーク市警とパトカーの運転手を相手に訴訟を起こしています。このブログでは亮の事故に関係する記事を投稿しています。ウェブサイトもご覧ください。http://oyamada.weebly.com/

オハイオ:司法省から警察への改善要求

久しぶりの更新となります。小山田亮君の事故についての裁判は、現段階でご報告できる事柄はありませんが、少しずつ進展しているようです。

そんな中、アメリカでは警察による暴力事件が多発し、今年に入ってから450人以上の人が警察に殺されています。(http://killedbypolice.net/)

そして、その警察に対するデモは、ボルティモアの一件にも見られたように一部暴徒化しています。(参考:

ボルティモア暴動 拘束された黒人青年の死亡で | JBpress | kinora(キノーラ)それほど、警察への不満が募っているのです。

 

その警察に対して、国は何も対処しないのでしょうか。今回、オハイオのクリーブランド警察に対し、司法省から改善要求が出され、クリーブランド市もその要求を受け入れることになりました。この新しい規律が上手く機能すれば、歴史的な改革となるかもしれません。  

 

事の発端は、2012年11月に起きた警察による発砲事件です。パトカーに対し発砲したと思われる車を、警察がパトカー60台、100人体制で追跡し、車に乗車していた黒人の男女に対し、警官13人が合計139発も発砲し、二人を死亡させました。その後、その二人の黒人は銃は持っていなかったことがわかりました。 

f:id:help_oyamada:20150529031210j:plain

 亡くなった二人が乗っていた車 (NY Timesより)

 

この事件により、6名の警官が起訴されました。その中でも、被害者の車のボンネットに上に乗り、49発を発砲したマイケル・ブリーロ巡査の裁判が行われていましたが、先日、ブリーロ巡査が、二人を死に至らしめるために発砲したという証拠が不十分という理由で、無罪判決が出ました。ブリーロ巡査の弁護人によると、ブリーロ巡査は、事件当時、被害者の車から発砲があったと思い、生命の危機を感じ発砲したということです。そして、弁護人は、「違法なこともしていないし、間違ったこともしていないので、自信を持っている」と話しているそうです。後の5名は、警察の責任者で、管理を怠ったという微罪に問われています。

また、この裁判中ブリーロ巡査は停職の処分になっており、クリーブランド市は被害者家族に3百万ドルの和解金を支払う合意をしているそうです。

 

しかし、ブリーロ巡査に対して無罪判決が出た後、クリーブランドでは大規模なデモが起き、大勢の逮捕者が出ました。

f:id:help_oyamada:20150529050934j:plain

デモの様子(Cleveland.comより)

 

クリーブランドではこの事件以外に、2014年11月、エアガンで遊んでいた12歳の黒人の男の子が警察に打たれ亡くなったり、精神疾患を持つ黒人女性が警察の暴力により亡くなったり、行き過ぎた警察の暴力が問題になっていました。

 

このような状況を受け、アメリカの司法省(Department of Justice)が2013年から、独自にクリーブランド警察の実態を調査し、2014年12月にその報告書が提出されました。そこには、警察の過剰防衛が常習化しているということが書かれていました。そして、今週初めには、司法省から出された105ページにも渡る基本規律がクリーブランド市に受諾されました。この基本規律は、警察の公務執行のあり方を定めるもので、クリーブランドだけでなく、全米中の警察のモデルとされるべきものだと司法省の担当者は述べています。

この新しい基本規律では、口頭で反論する人に対して、または、逃走したことに対しての罰としての暴力が禁止され、ピストルで殴打すること、脅しのために発砲することも禁止されます。さらに、スタンガンの使用はデータ化され、発砲以外のピストルの使用(ホルスターから抜いたなど)も、警官に報告を義務付けます。また、クリーブランド市は、この規律を守っているかどうかを独立機関に監視させることにも合意しました。もし、この規律を守らない場合には、司法省が市に強制的に遂行させる権力を持ちます。

クリーブランドのジャクソン市長によると、すでに警察の業務改正のため、警官にボディカメラをつけ、市民に対しての態度を確認するなどの対応を始めているということです。

 

司法省の警察に対する調査は、クリーブランドだけにとどまらず、ボルティモアやファーガソンの警察による殺人の事件にも行われ、その調査報告が公開される予定です。

 

 

米警察により、死に至らしめられた人の数が本当に多くて、驚くばかりです。そこにはやはり、人種差別や、貧困層に対する偏見などがあるように思えてなりません。

日本では報道が少ないかも知れませんが、アメリカの人種差別や、警察の残虐行為の問題は国際的にも議論されており、国連の人権部門からも改善するよう要請が出ています。(参考:US Faces Scathing UN Review on Human Rights Record | Al Jazeera America)警察の過剰防衛と職権乱用によって、間違った命が奪われ続ける現状は許されてはいけません。早急にアメリカ全土で新しい基準が採用され、改善につながることを希望します。そして直接的な暴力の排除だけでなく、警官の意識の向上によって、亮君の事故のような悲劇がこれ以上起きないことを祈ります。

 

 参考: