NO MORE TRAGEDY

小山田亮はNYで語学留学中にニューヨーク市警のパトカーに撥ねられて、24歳の若さで命を落としました。遺族は亮の死に関する真実を明らかにするために、ニューヨーク市警とパトカーの運転手を相手に訴訟を起こしています。このブログでは亮の事故に関係する記事を投稿しています。ウェブサイトもご覧ください。http://oyamada.weebly.com/

裁判終結のご報告

小山田さんの裁判が和解終結する事が、5月30日に法廷に報告されました。そのことが幾つかのメディアでも書かれました。(記事の下に添付しています)  

 

和解に至った経緯について、ご家族は、緊急走行であったと警官が主張すればその信憑性は問われないという現状、そして警官に広範囲な自由裁量が与えられているこのシステムの中では、多額の裁判費用を被害者側が全て負担しない限り、事故の責任を追求し続けて行く事が不可能だという現実を、受け入れざるを得ないと話しておられました。  

私も、この4年以上の間、ニューヨークにも足を運び、訴訟とご家族の様子を見てきました。 今年上旬もニューヨークでの法廷に同行しましたが、裁判のシステムを前に無念を感じざるを得ない言葉が、裁判官からも聞かされました。今回の決断は、4年以上に渡り、不当に命を奪われた息子・弟のために戦ってきた小山田さんたちにとって、苦渋の決断であったことは言うまでもありません。

 

現地のストリーツブログ紙には、小山田さんが公開した事故調査専門家による報告書の全文が添付されています。記事には、イラルディ警官の走行していたスピード・走行位置が事故の要因である事が、専門家により報告されたという事が書かれています。市警は事故当初の報告で、イラルディ警官が911コールに対応しており、35~39マイルで赤色灯を点灯し走行していたところに、小山田さんが車両の前方に飛び出して来たと主張していましたが、この事故調査専門家の報告書によると、これらの市警の主張が真実ではない、という事が書かれています。

 

 以下記事の抜粋ですー(一部意訳)

報告書には、「両側二車線の40アベニューで、イラルディ警官は、(二車線の)中央を走行していた」と書かれており、その車両の速度と走行していた位置が、小山田さんの事故の原因であったと示されている。イラルディ警官は衝突の前にブレーキを踏んだが、ハンドルを切り東向き車線(正しい車線)に戻る前に、西側車線で 小山田さんを轢いた事を証拠が示している。

 

 彼の足は折れて、頭は酷く損傷していた。彼はまだ息をしていて、生き延びようとしていた 警察はただ被害者を路上に放置し、助けようともしなかった。それは本当に悲しい事だ。と目撃者はWABCに話していた。 

小山田さん家族が起こした訴訟では、市警は目撃者に現場から離れるよう指示し、ビデオ証拠を破棄したと主張されている。(小山田さんの弁護士は市側から提供された監視映像は、事故そのものや事故後を映す部分が編集(削除)されていた、と主張している。) その訴訟ではまた、市警がイラルディ警官の事故時の携帯電話の使用について調べる事を怠り、 イラルディ警官の、過去の運転記録(事故・違反歴)に対しても対処を怠っていたと主張されている。

さらには、無線記録などの証拠がイラルディ警官が脅迫事件に対応し走行していなかった事実を示している、と小山田さんの家族は主張している。 

 

賠償金とは別に、小山田さん家族は、市警に対し、警官が赤色灯を点けていない時の運転ルールへの改善を求めた。またスピードバンプ(減速帯)の設置も求めた。家族は事故に対する包括的な対処を求めていた。しかし市警と市はそれらの要求をひとつとして認めなかった、とヴァッカロ弁護士は話す。 

 

Freedon of Information Law(情報開示制度)を行使して入手した資料によると、任務中の警官により引き起こされる交通事故件数は、市の他の部門による事故より圧倒的に多く、年間3900件である。市警による事故の深刻さは、市や市警からは公表されていない。しかし市の経理部門の年度報告によれば、市警は一貫して、車両事故を含む市警が起こした事故を、市に和解の方向に持って行かせている。小山田亮さんは、市警により引き起こされた事故に巻き込まれ殺害された被害者の一人である。さらなる命が奪われる事の防止を市警や市が優先していない事は明らかである。

 

またゴサミスト紙は、事故調査専門家が出した報告で、イラルディ警官の車は事故直前に時速64.4マイル(100キロ以上)で走行しており、制限速度が時速30マイルの道路を2倍以上の速度で走行していた事に触れています。そしてこのように記事を書いています 。

(以下引用)

 市警は小山田さんが車の走行経路に飛び出したと話していたが、報告書は小山田さんの歩行マナーに異常なものは見られないと示しており、小山田さんが走行中の警察車両の前に飛び出した証拠もどこにも無く、むしろ小山田さんが撥ねられる前に左右に動いた」 とするイラルディ警官の証言からは、小山田さんが向かって来る車両を避けようとしていた事が伺える、と示している。

   

また報告書には、イラルディ警官が制限速度をかなり超えた速度で走行していた事に加え、 中央分離線を越えて走行していたことが書かれている。報告書には、更なる二つの要因が書かれているようだが、その部分は(守秘義務に関わる部分があるため)伏せられており、Freedon of Information Law(情報開示制度)を使っても(関係者以外には)入手は不可能である。この四つの要因が組み合わされば、警察車両の進行方向にいた人全てが命を落としかねない危険な走行だったということが示唆される。

また、赤色灯やサイレンが点灯されていれば、小山田さんは、普通とは異なる走行して向かってくる車両を認識することができ、事故に巻き込まれることも避けられたのではないか、と報告されている。

 

 小山田さんは、「もし無謀な運転で居住区の道路を走行し、他者を死に至らしめれば、緊急走行であっても許されない、という事をイラルディ警官が認識していれば、亮が命を落とす事はなかったと思います。そして、ニューヨークでは法の力をもってしても、 警察から公平に証拠を得る事ができず、権力を持つ警察組織が起こす事件によって人の命が奪われても、業務の為に不可欠な犠牲のように扱われ続けている。この現状は、問題のあるものだと思います。力の有る側には広範囲な特権が与えられ、その特権が他者の命を守るものを蝕んでいる。その権力のバランスの現状を市民が知る事が改善への一歩であると思い、今回の報告書を黒塗りを入れてでも(守秘義務にかかる箇所を非公開にしてでも)公開する事がひとつのメッセージになる事を願いました。」と話していました。 

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