NO MORE TRAGEDY

小山田亮はNYで語学留学中にニューヨーク市警のパトカーに撥ねられて、24歳の若さで命を落としました。遺族は亮の死に関する真実を明らかにするために、ニューヨーク市警とパトカーの運転手を相手に訴訟を起こしています。このブログでは亮の事故に関係する記事を投稿しています。ウェブサイトもご覧ください。http://oyamada.weebly.com/

NYの交通事故の現状

“ It’s Too Easy to Kill Pedestrian in New York City” 

これは、今月5日Village Voiceの出した記事のタイトルです。

直訳すると“NYで歩行者を殺す事はとても簡単”となりますが、NYの交通事故の実状が伝わります。

 

今回はそのことについて書かれたこの記事の紹介をしたいと思います。


(ニュースソース:http://www.villagevoice.com/2014-02-05/news/nyc-pedestrian-deaths/

 

この記事の中での、ある被害者遺族の方の言葉が心に残りました。
“市民が交通安全の為の活動で作ってきた計画が、全く機能していないという事実、
この事実は私達を病に至らしめる”という強いものでした。

NYでは各地区の方々や、歩行者と自転車走行者の安全と権利を守る支援団体の方々が長い間、改善を求め活動を続けてこられました。しかし、記事の中ではNYの交通事故の悲しい現状が明らかにされていました。

記事では、「2013年NY市の殺人犯罪件数は2012年から21%の減少、2011年から35%の減少があったにも関わらず、車による死亡事故は2012年より5%上昇、2011年よりも15%上昇しており、この数字は殺人事件を防ぐ一方で、車による死亡事故の減少に関しては結果を出せなかった事を意味している」ということが書かれています。また、他のアメリカ内の大都市に比べ、NY市の交通事故件数は少ないものの、その数字を詳しく見ると、自動車の運転手の死亡率に比べ、はるかに歩行者死亡率は高く、NY市では交通事故による死亡率のうちの歩行者死亡率は52%なのに対し、国の平均は13%であることを挙げられています。

確かにNY市は、通勤の際も公共交通機関を使用する人や、徒歩の人が多い街です。しかし、この高い歩行者死亡率の現状を問題視し、地区の市民や、歩行者と自転車走行者を支援する団体の方々が、N Yの歩行者と自転車走行者の路上の安全と権利を守る為の活動を何年も続けています。

今回NYの新たな市長ビル・デブラシオ氏は、この交通事故の問題を受け、“ビジョンゼロ”という新たな取り組みに着手する事を、早々に発表しました。

この“ビジョンゼロ”というものは、10年の間に交通事故を排除しよう、というものです。

スウェーデンのビジョンゼロ政策では、交通事故の死亡者、重傷者をゼロにする為の”交通システムの設計”に重点が置かれ、国家事業として行われています。事故レベルが、人に死亡、重傷を与えない程度に抑えられるよう、安全重視の視点に立った交通システム設計を行い、それを守ろうという政策です。

スウェーデンにおいては10年で50%の交通事故削減に成功した実績があり、世界的にもこの理念が高く評価されています。

(参考資料: http://www.spotflex.co.jp/news/02.html


N Y市警の前本部長レイモンド・ ケリー氏の下でも、市民からの声を受け、部署の名前変更や、事故調査員の増員等の若干の変更が行われた様ですが、今回、新市長の指名により、新たにN Y市警の本部長に任命されたビル・ブラトン氏には、このビジョンゼロ実現に向け、強い協力が求められています。

この記事では、2008年から地区で交通安全の活動を行ってきた市民の方々が、交通事故要因を排除しようと、道路環境の改善提案を地区議会に提出してきたものの、それが進められなかった現状も書かれています。そして5年経過した現在、やっと地区の議会が動き始めたということです。

しかしこの5年の間、地区の市民が改善を訴えてきた、まさにその場所で、9歳の男の子や70歳の方が最近相次いで命を失ったという、悲しく悔しい現実が書かれています。

市民の声をなぜもっと早くに聞いてくれなかったのか、という怒りの声、そしてお願いだから政治家よりも市民の声を聞いてほしい、という懇願の声が記事には見られます。

今回、新たな市長となったビル・デブラシオ氏は、市長になる前は市のアドボケイツ(市民の声を市政に反映させるように勤める監督役、NYでは選挙で選出される)として、市民の声を代弁し、公的機関の透明化を促そうと、市政に異論を呈してきた人物でもあります。また、警察のストップアンドフリスク政策が差別的であるという異議を、市民と共に強く訴えてこられました。今回、N Yを1%の富裕層の街にしない、社会的平等を目指すという公約を持ち、市長に当選しました。

市民の期待を受け、デブラシオ氏が交通事故の削減に取り組む為に結成された、ビジョンゼロ委員会は、2月15日までに具体的な政策を打ち出す事が今求められています。
“家族のように市民に接する”と公言した新市長、その思いがどのように政策に反映されてゆくのか、どのようなNYを実現されてゆくのか、大きな期待がNYの記事からは覗えます。

そして長い間、NY市民や、歩行者と自転車走行者の安全、平等の為の活動を続けてこられた支援団体が、いかに粘り強く道を切り開かれてきたかを感じます。

同様の被害者をもう出さないで欲しい、という市民の方々の声に対し、強い改善が行われる事を、今回私自身も心から願っています。

※ウェブページに新市長へのコンタクトフォームを追加しています。そこから亮君の事故への信頼できうる捜査、一日も早い真相の解明への協力や、NYでの交通対策の改善を求め、短いメッセージを送って頂く事ができます。

皆様、ご協力をよろしくお願い致します。

 コンタクトフォーム

 

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