NO MORE TRAGEDY

小山田亮はNYで語学留学中にニューヨーク市警のパトカーに撥ねられて、24歳の若さで命を落としました。遺族は亮の死に関する真実を明らかにするために、ニューヨーク市警とパトカーの運転手を相手に訴訟を起こしています。このブログでは亮の事故に関係する記事を投稿しています。ウェブサイトもご覧ください。http://oyamada.weebly.com/

ニューヨーク市警が関わる交通事故の現状

今回は、亮君の事故から約3週間後、2013313日付けのStreetsblogさんの記事を紹介させてください。ここには、亮君の事故や、同様の事故について、そしてNY市警に対する賠償請求件数や、それによる支出などの数字が書かれています。

 

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221日、Queensbridgeで、日本人留学生であった小山田亮さんがニューヨーク市の警官によって撥ねられ死亡した事故について、警察は、緊急通報に対応するため、赤色灯を点灯しながら時速35~39マイル(時速5662km)で走行中に、小山田亮さんが道路に飛び出して来たとしている。しかし、複数の目撃者は、警察車両はサイレンも鳴らしておらず、赤色灯も点けていなかった、そして時速70マイル(約112km)で走行していたと証言している。

 

このNY市警の公式の事故説明とは矛盾し、家族に対する警察の説明では、(通報元にいる)容疑者に警察の到着に気がつかれないようにするため、赤色灯・サイレンは作動していなかったかもしれないと話した、と故人の父は話す。事件直後に撮られた動画では、近隣住民が高速で付近を走行していた警官に対し激しく怒りをぶつけている様子が見られる。

 

2011年にトラックに轢かれ亡くなったMathieu Lefevreさんの事件でも同様なことがあったように、故人の父は警察に納得のいかない対応を受けたと話している。近隣住民への説明会で警官の代表者は、ビデオで赤色灯が点灯されていたことを確認したと話したが、NY市警は、遺族がそのビデオなどの事件に関する証拠記録を直接確認することを拒否しているのだ。

小山田亮さんは、20124月にCanarsieで亡くなったTamon Robinsonさん以来、少なくとも昨年度二人目のNY市警の車両に轢かれて亡くなった歩行者となった。警察の報告によると、このTamon Robinsonさんは、事故当時、敷石を盗もうとしていたということである。

 

NY市警の月例事故データ報告書には、救急車・消防車・バス・タクシー・一般車両というタイプ別に、巻き込まれた追突事故の数が記載されている。特徴的なのは、その中にNY市警の車両による事故に関する項目が記載されていない事だ。

 

NY市警が関係する事故が、所有物破損、一般市民の負傷・死亡を引き起こしていることは、珍しいことではない。それが自転車(サイクリスト)を地面に転倒させることであったり、縁石に乗り上げて、歩行者を入院や死亡させたりすることである場合もある。そして、容疑者を追跡中に現場にいた人に車両が追突するという、一般的には賛否両論があるカーチェイスによる事故もある。

 

このように続発する事故により、2009年から2010年には、歩行者が三人、自転車走行者が一人、車の搭乗者が二人亡くなっている。ハーレムで、強盗事件で警察に追われていた逃走中の車両が、他の車両に衝突し、歩行者の集団に突っ込んだ際に亡くなったMary C. GrahamさんUpper West Sideの薬局でアレルギー薬を盗んだ容疑者に撥ねられ死に至ったKeren Schmeerさん。ロングアイランドでドラッグを購入していたという容疑をかけられていた男に轢かれたPablo Pasaranさん。(Pabloさんはレストラン従業員で、三人の子どもがいた。)目撃者情報によると、警察に追われていた車両窃盗の疑いをかけられた男によって、撥ねられ亡くなったVioletta Kryzakさん。(Violettaさんは当時38歳で子どももいた。)また、Staten Islandのカーチェイスは幼い息子を持つ夫婦を死に至らしめた。その様子はビデオに録画されていた。

 

我々は、NY市警公的情報機関に衝突件数に関して問い合わせてみたが、答えは無かった。色々他の機関を調査したところ、最も近いデータとして、ニューヨーク市に対する賠償請求の会計年報を見つけた。

 

その会計年報によると、NY市警は賠償請求と支出において他の機関から突出しており、2011年報での会計士であるJohn Lieu氏のオフィスが、警察が関係する交通事故に関して、法に基づいた任務遂行と責務のバランスの取るために訓練を続けるように、と推奨するほど、警察による事故は懸念すべき事項なのである。2011NY市が支払った5番目に高額であった和解金は、警官のカーチェイスによって引き起こされた事故による搭乗者の脳損傷に対するものだった。

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 ( 2011年度会計報告書 賠償請求額内訳 P.42)

 

2011年度の会計報告書によると、ニューヨーク市警に対する賠償請求は過去最高の8882件であり、それによる支出額は185.6百万ドル(約185億円)に上っている。これらの中には財産侵害、個人への障害行為に加え、警察の職権乱用・人権侵害などへの申し立てが含まれている。NY市警のパトカーが起こした事故については会計年報に事故個々の情報は記載されていないので、我々は、John Luis氏のオフィスにNY市警のパトカーの接触事故の詳細を問い合せている。もし回答が得られたら公開したいと思うが、それでも、一部の警官が無謀な運転をしている全貌はお伝えすることはできないだろう。NY市警は、交通事故や内部調査についての重要な情報と共に、事故個々の賠償請求は非公開としているのである。

 

以上が記事の訳になります。

 

確かに、犯罪者を捕獲することは警察の一番大切な職務の一つでしょう。しかしながら、数千円の薬を盗んだ容疑者を追うためにカーチェイスが行われ、関係のない人の命が奪われてしまうことが起きているのです。このような状況を受け、2011年度に第三機関が注意を促していたにも拘らず、市や市警の態度は今も変わっていません。今回もこのような市警の緊急走行中の安全に対する配慮の無さから、亮君という一人の若者の命が奪われました。これ以上、このような罪のない人々の命が奪われないように、市や市警は改善すべき点が多くあると思います。

今までも、こういう現状を未来に持ち越さないようにと、多くの被害者が声をあげてきました。私たち一人一人がこの現状を問題視し、声を届けることを諦めてはいけないと思います。

 

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